『朗読 蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』

 つかこうへい没後10年。自粛前の紀伊國屋ホールで『熱海殺人事件』を観て、解禁後の『朗読 蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』でした。(公式サイト)これは共犯で確信犯だという舞台。まあそりゃそうですよ、紀伊國屋ホールでつかこうへいで岡村さんですから。客席は当然1席飛ばし、体温チェックに手の消毒で、みんなマスクをしている。

 つかこうへいはいつ演じられても同時代性があるのだろう。そして観る者の琴線に触れる。あまりに個人的な思いを登場人物に重ねてしまう。時代性ということでいえば、意識的にルリ子の病気の話はスポットを当てていたように思うが、単純にスポットが当たっていると思っただけかもしれない。その中でこのタイミングで戯曲にヤスの出身地として(先日水害があったばかりの)人吉と入ってくるところはなんかもうほんとすごいなあと思ってしまった。もともとの設定が人吉なんだもんなあ。

 帰宅して文藝別冊のつかこうへいの年譜などを確認しつつ、戯曲を確認してぼんやりとつかこうへいと『蒲田行進曲』に思いを馳せる。

つかこうへい (文藝別冊)

つかこうへい (文藝別冊)

  • 発売日: 2011/01/21
  • メディア: ムック
 

 私が錦織一清・草彅剛・小西真奈美の『蒲田行進曲』を観たのはもう20年近く前のこと。その後佐藤アツヒロが加わっているバージョンも、錦織一清風間俊介のバージョンも観ている。それが物心ついてからのつかこうへいとの出会いで、いろいろあってまた最近つかこうへいを観ているわけだけれども、演出の岡村さんが言うように、あまり『蒲田行進曲』は演じられないらしい。だからすごく久しぶりにちゃんと『蒲田行進曲』を観た。いや『銀ちゃんが逝く』だけども。『熱海殺人事件』より『蒲田行進曲』の銀ちゃんとヤスの関係が圧倒的に好きで、胸をつかれる。ヤスであり銀ちゃんであるアイドルタレント役者、板の上あるいは画面の向こうにいる者たちよ。『銀ちゃんが、逝く』と『銀ちゃんが、いく』と『銀ちゃんが逝く』の句読点にも思いを馳せてしまう。とんねるずふたりのヤスと銀ちゃんが世の中に存在するのってすごいよねえ。私は推しに『蒲田行進曲』をやってもらいたいタイプです。君は銀ちゃんでヤスだ。どうでもいいけど、文藝別冊で平田満さんが語るつかこうへいが銀ちゃんで平田さんがヤスみたいなのすごいです。

 しかしこのままだと『天国の本屋』でも観た井上小百合さんが今年1番見た役者さんになってしまうのではなかろうか。乃木坂からシス・カンパニーかあ。素敵な役者さんだ。