ミュージカル『SPY×FAMILY』

【鈴木拡樹/佐々木美玲/井澤美遥/瀧澤翼】帝国劇場3/15昼回

 帝国劇場で『キングダム』に続いて『SPY×FAMILY』を観てきたんですけど、アーニャがかわいいのでなにもかもどうでもいいというか、アーニャがあれだけかわいければもう大成功なんですよね、この舞台。いい意味でふざけているところは賛否両論ありそうだし、テンポ感も好き嫌いありそう。原作が続いているところなので、お話も途中だし、大きな筋がばらけているところもあって、でもアーニャがかわいいので問題ないな、となってしまうのは本当に素晴らしい。キャスト推しの舞台でもこういうことはあるし、それは悪しき文化だと思っているのだが、この場合はキャストではなくアーニャがかわいくて、問題ないので全然別の話である。2.5次元舞台をぼちぼち観ている身としては、鈴木拡樹が帝劇主演か! という感慨もあったりする。

 春休み帝劇は昨年『千と千尋の神隠し』で、今年は『SPY×FAMILY』。こどもたちも一緒に観られる舞台としてはどちらも非常に優秀だったのではなかろうか。

 こどもたち、ということを考えると、この年齢で帝劇に立つ子役について思いを馳せるのだが、そういえば帝劇に子役で『屋根の上のバイオリン弾き』に出演した、現在は芸能と関係のないお仕事をしている友人というのがいまして(急にネタにしてすいません)、なるほどいろいろだな、と考えてしまった。同時に伝統芸能ってつまり、結局血筋とか家柄というよりは物心つくかつかないかの年齢からその芸のお稽古をしていることが重要で、それがキャリアの差になるだけの話なんだよな。「家柄」についていろいろ考えると実家が太いの話になったりして、教育格差についても考えたりするのだが、ここではいったん脇に置いといて、やっぱり英才教育の強さってある。基礎教育の強さ、というか経験の差、親の理解などの差異は圧倒的。

 同時に『キングダム』の感想でも書きましたが、青年少年マンガが帝国劇場で演目になるというのは、どちらかというと2次元業界(マンガアニメゲーム業界)の仕事をしている人間として、非常に感慨深いものがあるんですが、一方でじゃあ国産ミュージカルはどうなんだろう、オリジナルミュージカル、あるいはオリジナル舞台……オリジナルドラマ、映画もそうですけど、そういうものが少なくなっている現状には、舞台ドラマ映画がんばれよ! となったりもしたし、不安になったりもしました。まあ仕方ないんだろうけどね。

natalie.mu