君の笑顔を
彼のことを思い出すとき、といっても私は熱心なファンではない。ただ『キンキーブーツ』という舞台を観た時の記憶が鮮やかだ。『キンキーブーツ』はドラァグ・クイーンのローラ、そして靴工場を継いだチャーリーが主演。日本版のローラを演じたのが彼だった。自分らしく生きていくことを歌い上げるローラが本当に素晴らしかったのだ。
シンディ・ローパーによる劇中曲『Raise you up』はそのタイトル通り繰り返しraise you upとローラが力強く歌っていた。あんなに強いメッセージを持った舞台を演じた彼がそんな道を選んだことに悲しみしかない。
そして以前も似たような話をしたが、改めて報道に対して憤りを覚える。私はあまりリアルタイムで事件に言及しないようにしているが、あまりのひどさにTweetしてしまったものが拡散された。
このようなことがあるたびに永久に貼り続けますが「メディア関係者に向けた自殺対策推進のための手引き」です。このような報道はすべきではありません。https://t.co/juNReSYBXI
— 金巻ともこ (@tomoco) 2020年7月18日
直後のTweetだったせいもあるのだろう。このあと毎日新聞が私のTweetを引用RTした精神科医の斎藤環さんのTweetを私のTweetを削った形で記事にした(その上斎藤さんのTweetによると無許可だったという)という小さく不愉快な出来事もあった。不愉快だが記録として残しておく。本当に呆れる。
この毎日新聞の報道自体ガイドラインに照らし合わせると適切な報道とは言えない。それにしても直後の報道も、そして今に続く報道もひどいものだ。
私の思いは直後にTweetしたこれ以上でもこれ以下でもない。
そして私はコンビニでスポーツ新聞の一面見出しにクラクラしていました。あなたの家族に友人に自ら死を選んでしまった人はいませんか、そうですか
— 金巻ともこ (@tomoco) 2020年7月19日
私は家族と友人に自死を選んだ人間がいる。そしておそらく最後のきっかけは些細なものだろうと思う。こういうとき、ガイドラインを守って適切な報道がなされることを願ってやまない。またそういう思いを心に抱いてしまう瞬間はある。この不安定な世界できっとみんな不安な気持ちでいる。友達に頼れないという気持ちもわかる。せめて精神科の受診を、あるいは電話でサポートしてくれる団体や、対策をしている団体がいくつかある。どうか助けを求めて欲しい。