『ミュージカル 天国の本屋』とあの日のこと

 今日はA.B.C-Z河合郁人くん主演の舞台『ミュージカル 天国の本屋』の大阪大千秋楽でした。ベストセラーの舞台化なんですけど、周囲のおたくの間ではあんまり評判がよくなくて、でも私は初日からめちゃくちゃ大好きだ! って。
ヘンゼルとグレーテル』と『泣いた赤鬼』と『ナルニア国物語』を河合くん演じる主人公が朗読するシーンがあるんです。推しが本を読む! って考えればそれだけでもまあまあ私の琴線に触れるに決まってるんですよね。結局作品の良し悪しなんて見たタイミングで判断されるって話なんですけど、初日、主人公がナルニア国の朗読始めたところで本当に死にそうになって手元の手拭いを汗ばんだ手でめちゃくちゃ握りしめてしまった。あのラストを主人公が朗読するの。

アスランが頭をあげてうなりをあげました。『時が来た!』そしてもう一度さらに大きく『時だ!』と叫びました。それから空の星々をふるわすほどの大声で『時よ!』と吠えました」

 本当に最高だなって私はなったんですけど、舞台そのもののストーリーを冷静に考えるとナルニア国を読んでないとオチがわからないんですよね、たぶん。原作小説はまだ読んでないので知らないんですけど、舞台世界のオチというか仕組みがナルニア国のラストを演じることで明かされる、同時にヒロインの心の傷も癒される、しかしナルニア国のあのラストをある程度解釈してないと、ほんとたぶんよくわかんないエンディングなのだ!笑 だからわかんない人には全然おもしろくないというか意味不明だと思う。そしてわからない客に罪はない。それ以外にも舞台のテンポとか登場人物の心の流れとか気になるところはいろいろあるんだけど、ともあれ主人公が本を朗読するだけで、そして大体の朗読は途中から歌とミュージカルになるんですが、ほんともうすばらしすぎて私はずっと死にそうでした。

「本のページをめくるたびに僕は新しい僕を見つけた」

 って途中で主人公が歌うんです。『泣いた赤鬼』を朗読したあと、その絵本を抱いて。これ『ナルニア国』なかったとしても自分の状態を鑑みると、もしかすると私はそれだけでウッてなった気さえするんですけども。朗読によって自分を取り戻していく青年ですからね、主人公は。
 その上で今日しみじみと見て今の私が『ナルニア国』のラストシーンで感銘を受けるというか過剰な思い入れを持ってしまうのって説明するまでもなく、あれはファンタジーの古典で原典だからだよなーって。そして異世界転生に見せかけたセカイ系ですからね! ナルニア! そりゃ今の私の胸を打つに決まってるわけです。私、本当に今回の『ミュージカル 天国の本屋』が好きだった。

 なのに東京千秋楽はインフルでいけなかったんすけど!

 そして大阪大千秋楽は、大阪出張にあわせてしっかり組んだものの、インフルでうまくチケットのお譲りができなくて、本当にギリギリまで探していて、そしたら昨日Twitter経由で連絡が来て、お譲りが決まったんです。劇場前で初めて会ったひとまわり以上年下の娘さんは開演前に話したら「ジャニーズの舞台のチケットをネットで知らない人にゆずってもらうのも初めて」で「河合くんの単独出演舞台を見るのも初めて」で、「でも絶対見たいって思って前日に決めて来ちゃった」という人だった。
 終わったあと興奮していたのでナルニアの解釈の話をわたしはついしていまい、そしたらナルニアを読んでるタイプの娘さんで盛り上がったので、以前おともだちに教えてもらったお初天神あたりのワインビストロにナンパして(?)、いろいろお話ししてたんです。楽しかったなあ。グラスワイン2杯なので酔ってません! 
 それでね、梅田駅改札まで彼女を送ってったんです。また会おうねって別れた。そんでホテルまでポテポテ歩き始めたら突然その場所がそこだったことに気づいたんです。

 ちょうど20年とすこし前くらい、ネットで初めて出来た友達はSMAP仲間でした。そのうちのひとりは大阪在住でがんを患っていて、入院と自宅療養で会ったことがなかった。外出できるってなったときに大阪に会いに行くことを決めて、そしたら仲間がビックリさせちゃおうって提案して、私は内緒のメンバーだったの。当時私は多分そのグループで最年少だった。
 私が立ってたのはあのときのそこだった。街の風景はあの頃とすこし変わってたけど、でも間違いなくその場所に私は立っていた。
 今の私ならサプライズとかちょっとな〜てなるけど、でもたぶんあの時のはきっと間違ってなくて、その時友だちは泣いて喜んでくれた。会いたいと思ってたって。それが私の人生におけるおそらくはじめての印象的な大阪の思い出で、今期月1で大阪で仕事をさせてもらっていながら全然思い出さなかったんだけど、急にぶわーって思い出した。あの一瞬にして記憶が蘇る瞬間というのを梅田で味わった。
 あのときのSMAP仲間が、あるいはSMAPがいなかったら、ネットでもオタクでもなんなら仕事でも、たぶん私はこんなふうになってない。そのあと彼女は死んで、私は死んだときの彼女よりもはるかに年上になってしまった。彼女は生きていれば私よりひとまわり年上のはず。死んだ友だちにならないようにしなければ、と思いながら私は相変わらずの日々を過ごしている。彼女は私の初めての死んだ友だちだった。あの時みんなで楽しかったのは間違いないし、SMAPからA.B.C-Zを大好きになって、河合くんの舞台をきっかけに年下の女の子と知り合った今日は、あの愛しき時からここまでちゃんと続いている。ここはあの頃の未来だ。そんなことが一気に押し寄せて、ひとり梅田の道端でちょっとだけ泣いてしまった。

 そんな梅田の夜です。明日は大阪で仕事だよ! おやすみ!