『ABC座 ジャニーズ伝説 2017』と『新しい地図』

『ABC座 ジャニーズ伝説 2017』が今日10/28に千穐楽を迎えた。『ABC座』とはA.B.C-Zがデビュー年である2012年から毎年日生劇場やっている公演で、今回の『ジャニーズ伝説』は2013年、2014年にも上演され、3年ぶり3回目の公演になる。公演期間は大体1ヶ月。この物語はジャニーズ事務所の一番初めのグループである”ジャニーズ”の結成から解散までを描く。もちろん2013年、2014年の公演も私は見ている。2013年初演の舞台については『ユリイカ2015年4月臨時増刊号 総特集2.5次元』の「ジャニーズという二・五次元」から内容を引用しよう。

かつてジャニー喜多川が初めてプロデュースし、初めて脚本演出を手がけたミュージカルの主演でもあったグループ”ジャニーズ”をA.B.C-Zが演じるという試みだ。かつて実在したアイドルをアイドルが演じるというパラドクスに加え、さらに第二部ではジャニーズの歴史と称して、いくつかのグループの名曲をメドレーで歌った後に、A.B.C-Zの結成劇、そしてそれにまつわる軋轢などが舞台上で展開された。

 公演前、どうして今『ジャニーズ伝説』なのか、と私は思っていた。舞台上で”ジャニーズ”は解散する。初演再演と2部の構成は変わったが、”ジャニーズ”に関しては初演から変わらない。”ジャニーズ”が解散したのは事実だからだ。

 昨年から今年にかけて私たちは、いや私はジャニーズ事務所SMAPに関するトラブルを見てきた。その中でなぜ今年3年振りに『ジャニーズ伝説』なのか、と。そこに意味はあるのか、あるいはたまたまなのか。公演前日、ゲネプロレポートでこんな記事があった。

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 オープニングテーマに22グループ名が登場すると。その中にSMAPの名前もあると。私は不安だった。とてもとても不安だった。

 そのおよそ2週間前、9/22に私は「新しい地図」という単語を知った。9/8にジャニーズ事務所を退所した稲垣吾郎草なぎ剛香取慎吾が立ち上げたWebサイトだ。それはそれは鮮やかな登場だった。私はTwitterでこう書いた。

 さらに日付を遡るなら、3人が退所したその9/8、A.B.C-Zはコンサートツアーのただ中だった。その当日、メンバーである戸塚祥太河合郁人はコンサートでSMAPの『友だちへ~Say What You Will~』を戸塚のギターで歌った。それは前々日の公演で怪我をした塚田僚一に捧げたと彼らは言ったが、それでもその当日にSMAPの歌をうたうなんて。2016年10月にも彼らは、いや河合郁人は同じようなことをしている。(「夜空ノムコウ」- SMAPとA.B.C-Z河合郁人さんのこと -)そこに意味を持つのは妄想だ。でも少なくとも私にとっては意味があった。

 そして迎えた初日10/7。冒頭で歌われた「We're ジャニーズ」。その歌詞にグループ名として一番始めに登場するのはSMAPだった。「駆け抜けたSMAP」と彼らは歌った。そうだ、駆け抜けたのか、過去形か。

 過去の公演ともっとも異なる箇所はジャニー喜多川らしき人物が戸塚祥太によって演じられているということだ。過去の公演でジャニー喜多川は登場していなかった。登場しないままに物語は進んでいた。いや正確に言うならば、今回も彼は一切自分がジャニー喜多川だとは名乗らず、あくまでジャニー喜多川らしき人物なだけだ。ただしグループ名が彼の名前から取ったという流れで”ジャニーズ”と決まったことが語られる。そして彼はメンバーを「YOUたち」とも呼ぶ。様々な出来事がかつて”ジャニーズ”に作られた曲である「Never My Love」(その後Associationにより全米チャート1位を獲得)を軸に語られ、そして最後にジャニーズは解散を選ぶ。

 まず橋本良亮演じるあおい輝彦が「一度ゼロに戻そう」と告げる。それに五関晃一が演じる飯野おさみが「解散ってことか?」と問いかけ、河合郁人演じる中谷良は「同じことを考えていた」と答える。それに「簡単に解散なんて言うなよ!」と塚田僚一演じる真家ひろみが反発する。飯野が「俺たちはすべてやりつくしたんだ。その結論が解散なんだな」とあきらめたように言うと、中谷は「これは解散なんかじゃない。俺たちが新しい道を切り開く。そのためにここで決着をつけるんだ」と言い、飯野は「俺たちの手で俺たちの時代を終わらせる。そしてまた新しい時代を作る」と答え、中谷はさらに「未来のための解散なら俺はいいと思う」と。そして最後に戸塚祥太演じるジャニー喜多川らしき人物は「誰も開けたことのない扉を君たちがあけたんだ。本当によくがんばった。僕も楽しかったよ。ありがとう。君たち自身の手でジャニーズを終わらせるなら、僕は文句を言わない。いいや、誰にだってそんな権利はないよ」とあおいに告げる。

 このときほぼ全員がつらそうで泣きそうな顔をしている。なんなら公演によっては涙を流していることもあった。

 そこからショウタイム的にフォーリーブスメドレーから過去のグループの名曲が歌われる。そのときバックスクリーンには各グループの映像が流れる。この中ですでに退所者がいるたのきんトリオやシブがき隊は全員映像にメンバーがいる。だが、男闘呼組は遠目に4人は映るものの大写しになるのは岡本健一だけ。光GENJIも同様にソロショットがあるのは佐藤アツヒロ内海光司だけ。そして流れはじめる「世界に一つだけの花」。その歌のバックスクリーンの中にSMAPは5人いた。5人それぞれのソロショットもあった。そして「世界に一つだけの花」から少年隊「君だけに」で過去グループメドレーは終わる。

 ここから圧倒的なA.B.C-Zのパフォーマンスが始まる。そのパフォーマンスは本当にすさまじく、A.B.C-Zの真骨頂とも言える。そのラスト橋本良亮が「これからの道は僕らが切り開く。受け継がれたこの歌とともに未来への扉を開けよう」と「Never My Love」を歌って舞台は終わる。

 初日、私は混乱していた。スクリーンの中にSMAPがいた。5人それぞれのソロ画像があった。いやシブがき隊だって全員いた。他のさまざまな事情が解散したグループにあるのは理解している。でもSMAPが全員それぞれ映されたのだ。その上で『ジャニーズ伝説』は解散の物語だ。あのジャニー喜多川とは名乗らないジャニー喜多川はなんて言った? なんて? 新しい扉????

 舞台としては最高だった。初演再演と比べて圧倒的に物語は完成していた。でもそれでも私は心にわだかまりを抱えていた。

 そして2回目に観たとき、気がついたのだ。幕間スタートと客だしで流れる曲がSMAPのデビュー曲「Can't Stop!! -LOVING -」であることに。幕間はまだいい。この物語を見たあとに流れる曲がSMAPのデビュー曲だなんて。そこに意図はあるのか。

『ジャニーズ伝説』公演中、「新しい地図」はさまざまな動きを見せた。それは鮮やかで「誰も開けたことのない扉」に思えた。その中で私はこの舞台を観て考えていた。一方でA.B.C-Zのパフォーマンスは最高だった。舞台の出来映えだって最高だった。本当に最高なんだ。

 

「一度ゼロに戻そう」

「簡単に解散なんて言うなよ!」

「これは解散なんかじゃない。俺たちが新しい道を切り開く。そのためにここで決着をつけるんだ」

「俺たちの手で俺たちの時代を終わらせる。そしてまた新しい時代を作る」

「未来のための解散なら俺はいいと思う」

「誰も開けたことのない扉を君たちがあけたんだ。本当によくがんばった。僕も楽しかったよ。ありがとう。君たち自身の手でジャニーズを終わらせるなら、僕は文句を言わない。いいや、誰にだってそんな権利はないよ」

 

 ねえ! なあ!! ジャニーおじいちゃん!!!!

 

  千穐楽公演、私は初めて解散のシーンで泣いた。ようやく泣いた。そして「世界に一つだけの花」から「君だけに」の流れでも泣いた。そして舞台が終わってアナウンスが流れ、始まる曲はやっぱり「Can't Stop!! -LOVING -」で、またちょっと泣きそうになった。

 新しい扉にはいろんな種類がある。いくつもの扉がある。新しい扉はどこにあるんだろう。新しい道は。新しい地図は。

 未来への扉はどこにあるのか。A.B.C-Zの新しい扉は見た。次々に新しい扉を開いていくだろう。そして「新しい地図」はどうなるんだろう。今だって「新しい地図」は次々と扉を開けている。

 新しい地図を描かねば。でも過去は消せないんだ。そして新しい扉を開かなければ。

 ねえ、YOUたち。光り輝けるYOUたち。輝いていてください。そして新しい扉を開き続けてください。ねえ、お願いだよ。

 


 私は私の頭がおかしい上にこの文章もちょっとおかしいというか偏っているというかとっちらかっていることを知っているので他のレポートも貼っておきます。

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