2019年10-12月の観劇まとめ

『ABC座 ジャニーズ伝説2019』
個人的な思いを言えば、初日公演がすさまじかった。同時になぜか私はジャニー喜多川に許されているのだ、という気持ちになって胸が苦しかった。
さておき別の視点から述べるなら、今年はおじいちゃん死んだ直後だからエモいだろうなと思っていたら初日にメンバーのひとりが泣き、千秋楽別のメンバーひとりが泣いたというそういうエモ。ふたりとも多分舞台で泣くなっておじいちゃんに言われてたはずなのにね。そしてふたりとも私が見た中でもっとも不細工でもっとも美しい顔でした。オタとしては満足です!
今年は2017と2018にいたジャニー喜多川らしき人は実体として舞台にはおらず、そのせいでストーリーがぼんやりしてしまった。演目としては2018が完成していたと思うんですけど、2017が「解散の理由」、2018は「最後の夢」、2019は「弔いの儀式」であったなという。最終盤で誰も立っていないピンスポで気配が描かれるんですけど、弔いの儀式だとしたら偶像はそこに必要なく、しかし見守っていてくれるということだったんだと思う。そしてそれを見させられる観客というなんだか構造がすごい。ジャニー喜多川という偶像について考えさせられたなあ。ある種の宗教なんだな、これは。


劇団天然ポリエステル『パンパンじゃもの花じゃもの』肌編
ストーリー自体はまあまあオーソドックスなんだけど、非常に丁寧に作られていて、かつ心地よい演出。役者もいいし、緩急もすばらしかった。そしてこの内容でこれだけ詰め込をんで2時間を切っているのがまたすばらしい。女性キャストの顔編も見たかった。
難を言えば野ばらたち戦前劇団女形勢3人がどうしてパンパンになったのかだけは少し弱い気がした。アザミ小梅が襲われた理由もかな。戦争の影が薄いというか、苦悩が薄いというか、戦時中に彼女たちがどうしていたのかがさっぱり見えてこない。もう少し強ければ特に後半の撫子の伏線にもなったのではないか。オカマ、女形、男娼についてもLGBT方面から考えると少し古さを感じるけど描いた時代的にもこのへんは許容範囲かな。

ラ・マンチャの男
50年もやっている演目は古典であるなあと思いながら、途中で戯曲は詩人のためには書かれないという当たり前のことに今さら気づかされて、じゃあ「画家に詩人に役者たち」(ラ・ラ・ランド)はどう生きていくのかなんてことを白鸚さん見ながらぼんやり考えていた。しかし松本白鸚77歳! 上條恒彦79歳! 2時間休憩なし!! すげえ! あとこれが70年代演劇ブームのときに並行して商業演劇として上演されていたという事実がものすごい。

『THE NETHER』
キスマイ北山くんが主演なんですけど助演は平田満中村梅雀で殺す気か!!という演目。仮想空間と現実空間を行き来する構成になってるんですけど(そもそも仮想空間とは?みたいなことも考えられるが横においといて)すごく雑に説明するとオチとしては梅雀が仮想空間では美少女アバターなの。そんで仮想空間で売春してて、北山(のアバター)は梅雀アバターが初恋で初体験の相手なの。でも梅雀アバター平田満アバター(ただし仮想空間でも平田のみ同じ容姿)に恋をしてるのね。いろいろあってほぼラストシーン、平田梅雀がラブシーンを演じるんだけど、梅雀がパーフェクト美少女で死んだ。本当に美少女。そしてそのシーンが当然おっさんふたりのラブシーンなので哀愁に満ち満ちてて今私の中で今年ナンバーワンBLです。BLつーかボーイズラヴ。梅雀の美少女みんなに見てほしい……。最高……最高だった……。いやーほんとすごかった……。

舞台『チャージマン研!
伝説のカルトアニメをそのまま舞台化って本当にそのまんまでパーフェクト狂気でおもしろかったなー。悪ふざけと狂気の合間で演劇だからこそという演出の数々。すごかった。

『語りは酒とともにあり 酒林堂 鶴~お伽の棺~』
茶風林さん企画演出の朗読劇と言っていいのかどうか。松江での酒林堂も素晴らしかったですが、初の東京公演も素晴らしかった。とにかくおそろしいのは人だよなあ。お清めのお弁当、日本酒の鶴亀もおいしかった!

舞台『刀剣乱舞』維伝 朧の志士たち
今回は坂本龍馬の刀である陸奥守が主人公で土佐が舞台。坂本龍馬が元キャラメルボックスの岡田達也さんなんですよ。なんていうか良くも悪くもキャラメルボックスで、特に龍馬がひとりのシーンはここ刀ステから浮いてない? いや最高に素晴らしいけど浮いてない? いや最高だけど! というよくわかんない気持ちになりました。あと山内東洋がかっこいいな? と終わってから確認したら唐橋充さんでした。そりゃな! かっこいいよな! 繰り返し「物語」について語られるのですが、物語とはつまり呪いのことであり、刀ステの本丸は呪いが強すぎる。山姥切と三日月が残した呪いにこれから刀剣男子たちはどう立ち向かっていくのか次のステージ、ステップが楽しみです。

『ファントム』
オペラ座の怪人の翻案もので、城田優加藤和樹ダブルキャスト城田優演出という代物。城田優版を見てきたんですけど、加藤和樹版も見たくなってしまった! 内容としてはクソみたいな父親のせいでひきこもりになったかわいそうなファントムことエリックの話でした。父親があまりに胸糞悪くてびっくりしちゃった。エリックがかわいそうで哀れで本当に救いがない。でもオペラ座の怪人も救いのない話だよね……。

NODA・MAP第23回公演『Q:A Night At The Kabuki』
めちゃくちゃ当たり前のことを言います! 竹中直人すごい。いや皆さん全員すごいんですけども! 志尊淳くんはテニミュ時代を知っているので感慨深かったり、広瀬すずちゃんめちゃくちゃいいなあ、羽野晶紀こええなあとかもあるんですけど、なんか竹中直人すごい、で終わってしまう私よ……。ただみんなが知ってることを改めてこの目で確認するということはすごく大事なのだよな。

劇団鹿殺し『傷だらけのカバディ
ここんところご縁があって鹿殺しを結構観させていただいてるんですけど、前半脚本ちょっとまとまりない気がして丸尾さんの忙しさが心配になってしまった。後半は怒涛の鹿殺しで安心なんだけど、これ多分わざとなんだろうけど、カバディシーンのメソッドは完全にテニミュなので、これを面白いと取るか見慣れちゃっててつまんないと取るかはバランス難しいなあって。『俺の骨をあげる』でもとってたスタイルだから焼き直しに感じられるというか。あとこれインドの人に怒られないんだろうか、オリンピックマークって大丈夫なんだっけ? とか気になってしまった、笑

『舞台 さらざんまい』
よくもまあ原作通りにやったなあ、という1本。原作通りでちゃんとやってるという意味ではすごいよかったんですけど、その2.5次元ノリについてこれない人には非常に厳しかっただろうし、特にレオマブが好きな原作派のオタ(つまり私)は厳しかった人いたと思う。キャストのオタで原作知らない勢は楽しかったのかよくわからん。あと一部キャストの稽古不足感は否めず……これなー難しい話よなーいや今の2.5の弊害よな。原作みっちりからの2.5が久しぶりだったので「キャスト解釈違いです!」と自分が言い出したのがちょっとおもしろかった。

ナウシカ歌舞伎』
すごい舞台だったよ!! 昼夜続けて入るのがいいとは思うけど、疲れるし、集中力がなかなか厳しい。そして主演が骨折した状態というのは口惜しいものがある。主演の宙乗りも踊りもなかったので、ベストなのを見たかった……。
クシャナかっこよすぎでしたけど、でも見る前からクシャナ殿下がかっこいいって知ってました。その上たぶん主演怪我でクシャナのシーン増えてたんだと思う。
あととにかく大道具がすごすぎて、幕間の度に「これはおいくら……」とか同行者に聞いてしまってすまなかった。いやだってすげーよ! 大道具! 蟲が立体で出てくんだよ! こわいのなんの。巨神兵もすごかったよ!!! あと最後の戦いああなるとは!! なるほど!!! 

『劇団朱雀 復活公演』
おもしろかった!! 以外の感想がない。大衆演劇最高だなあ。一応5年前も見てるんですけどほんとパワーアップしてたなあ。今年ゆっくんを別の舞台で観た時にあんまりお上手ではないというかほんとハマってない役をやってて、あの舞台で観た人は別人だったのでは……いや太一さんも本当はきっとそうだよね、ふたりにとってここが最高で最強の場所! というのが伝わってきたのもすごくよかった。

『ウエストサイドストーリー』
宮野笹本三森バージョン。ストーリーはオーソドックスというかベーシックなアレがIHIで! というかんじ。もうちょっとテンポよくてもいいのかなあと思ったりもしたんですが、最後にスクリーンにブロードウェイ初演の日時とか出ちゃうので、そりゃベーシックだよ。
そして宮野三森ペアで個人的にはなんか胸熱になってしまった。宮野くんは本当にすばらしい歌と演技だったし、三森さんというと私が唯一触れたことのある三森さんがキューティパイスージー時代でしてですね、もちろんその後のご活躍も存じ上げてるんですけど、いやあすごいなあ。
ところでオケピどこにあったのかわかんなかったので、指揮者の方はカテコに出ていらしたけど、最後オケの皆さんを観たかったなー。
あとすげえヘタクソがひとりいた……やばかった……。

ちょうど鹿殺しで今年50演目合計54演目でした。

A.B.C-Z戸塚祥太さんがABC座公演中に会員制ブログの中で「舞台は客がアングルを決める」みたいなことを言っていて、私が映画館で映画を観るのが苦手で、でも舞台なら大丈夫ということの答えをもらったようで、感慨深かった。

つまり映画を見る代わりにインプットとして舞台を見てるんですけど、コスパ悪いよなー。しかし生の魅力に取り憑かれてしまうと抜け出せない。それが観劇。

12月の演目って割と男性のお客さんが多い演目だったのですが、こうなると座席運というのは絶対にあって、大きな男の人が前とか横とかに座ると、視界がだいぶ変わるので、ほんとこればっかりはなかなか難しいなあ、と。せめて観劇慣れされてればいいんですけど、私の視界を塞いだ方はそうでもなかったようで、ほんと難しい……あとシャワーは浴びてきてくれ約束だ。

どっかに書いたものを雑にまとめた。